洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧ペンネーム・敏宮龍一)によるブログ。

『ある山下テツローの場合』→第34話

第34話:サトミヤと新宿を漂流した一日

今回は第30話の中でカットさせていただいた、08/29/08(2008年8月29日)を公開しようと思う。

08/29/08(2008年8月29日)
今日は朝から曇っていて暑い・・・。
パートナーと朝食をとる。この日、バイトは休み。

13時に“南新宿”と呼ばれる、代々木駅でサトミヤさんと待ち合わせ。とりあえず、金魚だらけの喫茶店で一緒に昼食を取る。

2008年8月29日の彼・その1

©2020,2021 Ryoichi Satomiya

昼食を取った後、あの人と代々木駅前を少し歩く。
途中、山野(専門学校)の辺りで、あの人は、突然暗くなってしまい、しばらく無言・・・。サトミヤさんにとって、何か嫌なことでもあったのだろうか?
僕は、「か、歌舞伎町行きません?」とあの人に提案をしてみた。

(代々木)駅で新宿へ向かう列車を待つ間。
サトミヤさんに山野の辺りでの事を少し訊いてみた。かつて山野の近くにあったエキストラ派遣会社のオーディションに落ちた時のことを思い出してしまったのだという。サトミヤさんは長い事迷走をしている人のようだ・・・。

2008年8月29日の彼・その2

©2020,2021 Ryoichi Satomiya

 

新宿駅に着くと、サトミヤさんとそのまま地下道を歩いて歌舞伎町へ向かう。
*18年くらい前に火事があったせいもあるのか、歌舞伎町は人の出入りが減っているような気がする・・・。僕は*2新宿へ来た時のお約束をしに行くが、うっかりサトミヤさんがいる事を忘れていて、サトミヤさんに迷惑をかけてしまった・・・。

*3ハーゲンダッツの店が見える辺りで、サトミヤさんから*4新宿コマ劇場*5シアターアプルが12月で閉館・解体されることを初めて聴いた。コサキンのラジオで言っていたというが、僕はバイトをするようになってから、このところ深夜放送のコサキンのラジオを聴いていなかったので知らなかった・・・。
シアターアプルへ行ったのって、確か*6プロパガンダ』以来だ。歌舞伎町で僕が分かる建物は*7ミラノ座だけになるのか・・・。

僕は人前でカラオケをするのが苦手なのと、パートナーがカラオケ嫌いというのもあるので、仕事が休みの時は時々近所か新宿のカラオケボックスへ行って、*8ヒトカラをすることがある。僕みたいな年齢の奴には葬儀の司会の仕事が来ることは少ないというが、僕は何回か司会をしたことがある。このヒトカラの経験が葬儀の司会に少しは役に立っていた・・・と思いたい。

2008年8月29日の彼・その3

©2021 Ryoichi Satomiya

だが、歌舞伎町のとあるカラオケ屋で僕は呆気に取られてしまった。
サトミヤさんの歌えるという曲の多くが、僕が子供のときや若いときに流行った歌謡曲やアニメソングばかりだったのだ。心の中で「この人、(年齢)いくつなの?」と呟いてしまった・・・。
「最近の曲で唄えるものは?」と訪ねて見たら、「うーん・・・。あまり知っている曲が無いんですよね。強いて挙げるとすれば、*9「綺麗ア・ラ・モード」とか。」と答えた。
あの人は*10菅原洋一の「知りたくないの」で始まり、*11「そんな女のひとりごと」、*12「ホテル」、「いとしのマックス」、*13「太陽がまた輝くとき」、*14「悲しみに一番近い場所」、*15「ロマンティック・レイン」、*16「あんなに一緒だったのに」、*17フライディ・チャイナタウン」、*18エヴァの英語の曲・・・などと、ついて行く事が多少困難になった。ただ、なぜか、*19あの人はハイトーンな唄の多い大江千里の曲を余裕に唄えていて、それがなんか羨ましかった。
本人には失礼だが、サトミヤさんの本当の年齢が知りたくなってきた・・・。

2008年8月29日の彼・その4

©2021 Ryoichi Satomiya

このまま、置いていかれているのはどうかと思った僕は、おぼろげに覚えていた酒井法子の「夢冒険」を入力する。でも、テレビのアニメで聴いたことはあったが一度も唄ったことがない・・・。
いざ始まると、前半までは何とか唄えたが、その先を知らなかったために、曲の前半でギブアップしてしまった・・・。
その後気分を取り直して、いつもヒトカラのときに歌う、*20「太陽の化石」などを数曲歌った。
結局、僕らは3時間くらいカラオケボックスにいた。

そのあと、*21テアトルタイムズスクエアへ映画を観に行かないかとサトミヤさんを誘い、そのとき上映していた*22イントゥ・ザ・ワイルド』という映画を一緒に観る。その後、中央線に乗って、立川駅の改札口の近くでサトミヤさんと別れた。
*23サトミヤさんの自宅へ向かう電車の終電に無事乗り換えられますように・・・。

→つづく・・・。

参考資料
J-CASTニュースハーゲンダッツ店舗、日本から「消滅」 「なんでやー」「悲しい」惜しむ声相次ぐ」
https://www.j-cast.com/2013/04/19173546.html?p=all

*1:2001年9月1日に、新宿区歌舞伎町にあった1棟の雑居ビルで火災が起こった。このビルに入っていた数多くの大人専用のお店の従業員たちと利用客・44人が亡くなり、3人が負傷した。このビルはこの火災を機に使用禁止になり、その後解体され、しばらくの間は献花台が設けられていた。現在、この場所には1件の居酒屋が建っているという。

*2:この事については、2008年10月に入るまでお待ちいただきたい。

*3:1984年にハーゲンダッツが日本に進出し、カップ入りのアイスをコンビニやデパートでの販売を始めたが、ブランド名周知の目的で1984年1月から2013年まで、東京都の青山・渋谷・新宿・赤坂・原宿、横浜、大阪、神戸、京都、千葉県の浦安などで直営のアイスクリームショップもやっていた。カップで売っているフレーバーのアイスをコーンに盛りつけたものやパフェの製造販売をしていたという。しかし、ハーゲンダッツがスーパーやコンビニエンスストアでの製品販売に軸足を移すことになったため、2013年4月25日で日本中にある直営のアイスクリームショップをすべて閉店した。

*4:新宿コマ劇場のこと。施設老朽化と経営難で2008年12月31日に閉館。現在跡地にはゴジラの首が生えたビル(中には、シネコンとカフェとホテルが入っている。)が建ったのをキッカケに、現在の歌舞伎町は「性風俗とラブホテルの街」から「シネコンとホテルの街」に変わろうとしている。

*5:1982年にオープンした、新宿コマ劇場の地下劇場。隣には「コマ東宝」という映画館があった。様々な演劇や歌謡ショーなどが開催されてきたが、新宿コマ劇場の閉館に伴い、2008年12月31日で閉館。

*6:正しくは『Y.M.O. PROPAGANDA』。1984年に日本中のミニシアターと映画館で公開されていたYMO主演の映画。内容は、1983年12月に開催された“散開”ライブのパフォーマンスを再現したものを中心に、YMOの楽曲やメンバーのイメージ映像で構成されていた。翌年の1985年にVHS・ベータマックスソフト化されて、当時のYMO好きを中心に大ヒットしたという。若かりし頃のテツローが観たのは、たぶん1984年4月5日にシアターアプルで行われた、この映画の有料試写会ではないかと思われる。ちなみに、2005年と2011年にDVDソフト化されたことがあるが、近年のようにデジタルリマスターかレストアをしてから商品化するというのがまだ少数派だった時代にソフト化されたからというのもあって、ハイビジョン放送や4K放送に対応したテレビに映すと、色あせや音割れなどの経年劣化が悪目立ちしてしまい、観れたものじゃないという・・・。

*7:1956年12月1日に開業し、2014年11月21日に閉館した、新宿区の老舗映画館。ちなみに、ミラノ座の5階と6階にはボーリング場があった。現在跡地には歌舞伎町で一番高い超高層ビルが建築中という情報が出ているが、2021年2月にYOASOBIがこの建設中のビルの中でライブの配信を行ったというのが話題になった。

*8:「一人だけでカラオケすること。」を指す言葉。2000年代から2010年代ごろまで、若者や一部の中高年の間でよく使われていた。

*9:タレント・歌手の中川翔子の2008年のシングル曲。作詞は松本隆、作曲は筒美京平が行った。

*10:1967年に日本で発表された、「I Really Don't Want to Know」という洋楽の日本語バージョン。

*11:大相撲の力士・増位山が1977年に発表した曲。130万枚の大ヒットをした。

*12:歌手の島津ゆたかが1985年に発表した曲。くわしくはコチラ

*13:シンガーソングライターの高橋ひろが、1994年に発表した曲で、アニメ『幽遊白書』第4期エンディングテーマ。

*14:1983年から1984年まで放送されていたテレビアニメ『魔法の天使クリィミーマミ』エンディング曲の1つ。)「LOVEさりげなく」、((1990年の特撮番組『美少女仮面ポワトリン』のエンディング曲の1つ。

*15:歌手の稲垣潤一が1982年に発表した曲で、当時大ヒットした。

*16:日本の音楽 ユニット・See-Sawが2002年に発表した曲。2002年のテレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のエンディング曲になったことで当時大ヒットした。

*17:1981年に発表された、シンガーソングライターの泰葉のデビュー曲。くわしくはコチラ

*18:「Thanatos -If I Can’t Yours-」。1997年のアニメーション映画『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』の中の第25話「Air」のエンディングで流れていた歌。

*19:現在はカラオケへ行ってないので無理・・・。

*20:2000年10月に、とんねるず冠番組のスタッフたちによって結成された音楽ユニット「野猿(やえん)」が発表して大ヒット曲。

*21:東京・新宿のタカシマヤタイムズスクエアの12階にあった、“(2000年代当時の)東京都で一番大きなスクリーン”が売りのミニシアターだった。2009年8月30日に閉館。

*22:2007年のアメリカ映画。ジョン・クラカワーの『荒野へ』というノンフィクション小説をもとに作られた実写作品。2008年9月には、日本中の多くのミニシアターで上映されていた。

*23:この当時の私の自宅の最寄りの駅へ向かう最終電車は24時発だけだった。

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