洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧ペンネーム・敏宮龍一)によるブログ。

感慨深い特別上映だった。※ネタバレあり。

どうも。
今月18日に、約2年ぶりに新宿へ行きました。『ある山下テツローの場合』の再調査で行って以来です。
今回の来訪で、あの当時にあった建物やお店の多くが閉店・解体されていたのを確認しました・・・(-o-;

それはさておき、今回新宿に出かけた理由の1つは、『ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア』と『戦場のメリークリスマス 4K修復版』の特別上映がある新宿武蔵野館へ行くためです。shinjuku.musashino-k.jp実は、新宿武蔵野館に入ったのはこれが初めてです。
昔から新宿武蔵野館があることは知ってはいましたが、クセのある作品の上映が多い映画館なので入る勇気がありませんでした。
もしもこの特別上映が無かったら、たぶん一生行かなかっただろうと思います・・・(^_^;

新宿武蔵野館の展示スペースにて。

mobile.twitter.comco062c54.hateblo.jp

どの作品も、密なくらいに観客数は多かったのですが、どちらも若い人は若干数でした・・・。
本編中の時代錯誤感を楽しむ術を持っていない人や「動画は早送りしちゃう派」が多い今どきの人には、昭和と平成の映画は見るに堪えられないんでしょうね。
たぶん・・・(-_-;gendai.media上映中。
ラストエンペラー』や『戦場のメリークリスマス』も、レストアをした影響か、血が流れるシーンでの血の色の生々しさが増しているように見えてしまい、思わず目を細めてしまいました・・・。
年を取ってから、カラーの実写動画での流血シーンを観るのは苦手です・・・OTL
mihocinema.comdream.jp

この2作を観た後で、1つ気づいたことがあります。
どちらも、出演と音楽担当は坂本龍一教授という共通点がありますが、この2作は監督・脚本・製作年・国・演者・舞台設定は異なっているはずなのに、これらには“戦争の被害者と、その末路”という共通項があるように感じました。


ラストエンペラー』は、愛新覚羅 溥儀の自伝『わが半生』を基にしているのに、歴史的事実には重きをおかないで、監督の大胆な創作を盛り込んで形作られた作品です。
出演者のほとんどのが中国系アメリカ人の俳優な上に台詞の多くは英語という、英語圏ファーストです・・・(-_-;
ですが、溥儀の皇帝時代のシーンは、本物の紫禁城で撮影されています。

ja.wikipedia.org
cinemore.jp

主人公の溥儀は、小さい頃に皇帝になって以降、自分の親と兄弟や中国の世間の事を知らずに、城と中国の皇室の決まり事の中に20代まで閉じ込められて生きてきました。
その生活の間に、乳母と別離、初対面の弟・溥傑(ふけつ)との出会い、生みの母の訃報を知って城を出ようと試みて失敗したり、15歳で妻(皇后)お后第二皇妃)が出来たりもします。
note.comところが溥儀が20代を過ぎた頃に、軍人たちのクーデターによって、溥儀とその妻とお后と使用人たちは城から追い出されて、中国の都市の1つ・天津へ行きます。
これ以降、溥儀は激動と騒乱に振り回されていきます。
溥儀とその妻とお后は、そこで出会った甘粕正彦という日本人と共に、いち遊び人として日々を過ごしていました。
しかし、天津での生活の中でものの考え方が変わった溥儀のお后は、溥儀との離婚を決意し、夜逃げ同然で溥儀と妻と暮らした屋敷から去ります。
このことがキッカケで、溥儀は妻との関係も悪くなり、心の闇も深くなっていきます・・・。
どうでもいいかもしれませんが、個人的にこのシーンを改めて観ると、“この支配からの卒業”かのようにも見えました。

co062c54.hateblo.jpその影響などもあるのか、溥儀は、甘粕含む日本軍の策略に前々から感づいていた妻からの警告などを無視して満州国の皇帝となりますが、その皇帝即位は、溥儀を日本軍の侵略成就のための“道具”に変えるための儀式だったのです・・・。
夫が満州国の皇帝になってしまった事と、満州国の皇后にされてしまった自分に失望してしまった妻のシーンは、欧米の映画ならではの大げさな演出も含まれている箇所もありましたが、改めて見ると結構こたえます・・・。
本編中に差し込まれる、溥儀と溥傑と使用人戦犯収容所での様子と、溥儀が次々とかつての使用人から見捨てられていく光景。文化大革命の中で市民の一人として余生を送って亡くなるまでのシーンは観ていて、ただただ切なかったです。
この映画に取り上げられたほとんどの人物が、ある意味、戦争と時代の被害者だったのかもしれません・・・。


戦場のメリークリスマス』は、1940年代の世界観を描いたからなのと、戦争経験と戦後日本で格闘してきた人が監督をしている作品だからというのもあってか、同性愛者差別・言葉と肉体的な暴力・外国人差別の描写は多めです・・・(-_-;
ja.wikipedia.org10代の頃にこの作品を知り、この作品の原作などの資料を観たことを機に、1920年代から1940年代の日本で起こった事件や大東亜戦争のことを調べるようになりました。
そんなことをしているのもあるのか、改めてこの作品を観ると、*1この作品でのメイン被害者たちの言葉にしがたい悲痛と苦悩を感じた気がしました。「あのシーン」のことで騒いでいるばかりでは、この作品の本質のようなものを嗅ぎ取れないですよね・・・(-_-;
この作品のラストシーンの中で、ロレンスがハラ軍曹に対して言った「(英語で、)あなたは犠牲者だ。かつて、自分は正しいと信じて(戦争に加担してきた)人々の・・・。」という台詞が、この作品の内容のすべてを表しているような気がします。
co062c54.hateblo.jp個人的に、こんなにも感慨深い映画上映会は初めてでした。

*1:日本軍のヨノイ大尉やハラ軍曹などを含む若手軍人・イギリス軍人のセリアズ・日本軍の軍属の朝鮮人・一部の俘虜(捕虜のこと。)。

TOP