YMOのポスター延命作戦
どうも。
既にご存じと思われますが、3月3日の21時(午後9時)30分から、1980年にフジテレビで衛星生中継・放送された、『YELLOW MAGIC ORCHESTRA WORLD TOUR ‘80』のアメリカ・ロサンゼルス公演(チャップリンスタジオ)と東京公演(日本武道館)の模様が、CS放送のフジテレビTWOで放送されます。約43年ぶりの放送とのことです。
CSが映るテレビをお持ちの人は是非ご覧ください!
個人的には、地上波の深夜かBSで放送してほしかったです。だって、私のいる地域はCS放送が映らないんですもの・・・(T_T)www.sankei.com
それはさておき、今回は久々にヲタ臭キツめな内容です・・・(^_^;
がんばってついてきてください!
突然ですが、これは*11983年のYMOの“散開”コンサートツアー開催告知ポスターです。
某マニアショップからの連絡を3年以上待っていましたが、かつて“散開”コンサートツアーが開催された東京都以外の地域(北海道、福島県、愛知県、大阪府、福岡県)とその近隣地域で、2010年代以降に起こり続けている大地震や豪雨災害の情報と、私の余命のことを考慮すると「望み薄かな・・・」と判断し、最近、千葉県から某ネットオークションに出品されたものを発見し、どうにか落札しました(結構な額の手数料と送料を取られたけど・・・(^_^;;)。
いざ届いた物を観てみると・・・
1983年当時の印刷物なので、多少のシミ・折れ・痛み・変色があることは我慢します(YMOも結成40周年過ぎてるし・・・(^_^;)。
ですが、次のものを見て、今回落札したポスターは何年も屋内にほったらかしにされていた物だということが分かりました。
私がそう思った理由の1つは、ポスターの印刷面(表面)と裏面に、謎の飴色の物が付着していたからです。この付着している物の正体は輪ゴムの残骸です。
これは私の憶測になりますが、*2手に入れた当時、ポスターに巻かれていた輪ゴムをそのままにして、長いこと部屋の片隅にいる間に輪ゴムが品質劣化したことによって、輪ゴムとしての形を維持できなくなって崩壊し、その一部がポスターの表面や裏面にくっついていて固まったままになっていたんだと思われます。
もし、輪ゴムでまとめられたポスターをお持ちの方がもしいらっしゃいましたら、大至急その輪ゴムを外してください!
どうしようかと思い、私がかつて持っていた学芸員資格の勉強でやった事や、日本の図書館や美術館の資料のお手入れ業界がネット上に公開している情報をもとに色々と検討した結果、可能な範囲でこの輪ゴムの残骸を取り除き、適度な消しゴムや消毒エタノールでのドライクリーニングと応急処置をして、私が旅立つ時まで持ちこたえてくれるようにしたいと思います。
なお私は、作品修復の技術までは持っていないので、出来るのはドライクリーニングと応急処置だけです。
今回使ったのは次のようなものです。
本当ならば専門店でそろえたかったのですが、今回は私の身近で用意したものを使ってやりました。
今回用意したもの
- 短い爪で石鹸できれいに洗った手
必須です。洗い終わったら、ちゃんと拭いて乾かしてください。 - 汚れてもいい動きやすい服装
これも必須です。 - 換気できる空間
これもまた必須です。 - プラスチック消しゴム
ポスターに付着したベタつく“何か”の除去や、ポスターの印刷面と紙に積もっているホコリやカビの除去をします。今回は、おろし金ですり下ろした消しゴムと擦り下ろしていない消しゴムを用意しました。
どうでもいいことかもしれませんが、日本の文具店や100均ショップなどで買える、いわゆる“消しゴム”の原材料はゴムよりプラスチックの割合が多いです。そのため、プラスチック製の筆箱や箱の中に長いこと置いておくと消しゴムの周囲が溶ます。ちなみに「ねりけし」も、プラスチックや鉱物油などの添加物で出来ています。
画家や美大生が来るような画材店や大規模の文具店でないと、ゴムの割合の多い消しゴムはありません。 - 消毒用エタノール
これは、新型コロナウイルスの感染拡大した時に、日本中から消えて、介護施設や福祉施設の人と看護師さんとスマホやパソコンの修理職人を落胆させた、あのエタノールの一種です・・・(^_^;
これは、そのエタノールを消毒剤として使うために、素肌に触れてもまあまあ大丈夫な程度に精製水で薄めたものです。普通の薬局やドラッグストアに行けば、必ずあります。
ご自分でエタノールと精製水で作っても構いませんが、くれぐれもエタノールの量は気を付けてください。ポスター自体の崩壊の原因になったり、ヤケドやアカギレをすることがあります。
01.connect.nissha.com今回はそれを霧吹きに詰めて、ポスターの裏面の汚れ取り&カビ落としとして使います。ポスターの印刷面の色が消えるので、表面には絶対に使わないでください!
なお、エタノールは可燃性の薬品なので、火と静電気には十分ご注意ください。 -
食器洗いのスポンジ
スーパー・ホームセンター・100均ショップなどで売っているものです。
ポスター印刷面(表面)のホコリ・カビ取りや、消しゴムクリーニングをしたポスターの消しゴムカス落としとして使います。絶対にたわしの部分は使わないでください。
あと、一度でもポスターのホコリ取りなどに使ったスポンジは、安全のために再利用しないでください。
本当ならば、刷毛を使った「ドライクリーニング」の方が良いのかもしれませんが、今回の物は本でなくポスターという大きな紙なので、食器洗い用のスポンジにしました。
なお、保湿成分が入っているスポンジや素材の添加物が染み出してくる可能性がある海綿・こんにゃくスポンジ・セルローススポンジもダメですし、研磨剤のような効果のあるメラミンスポンジや、製造時に肌触りなどを優先した素材を使っている物が多いメイク用のスポンジもダメです・・・。 - 模造紙
近所の100均ショップや文具店で売っている物を使いました。
本当なら大き目の中性紙が欲しいところですが、一般人に売ってもらえる業者さんがなかなか無いので、「2000年以降の日本で流通している(本・雑誌・ノート・マルマンのスケッチブック・画用紙・教科書などで使われている)西洋風の紙は“中性紙”」という都市伝説を信じて、これを使います・・・(^_^;
ここでは、ドライクリーニングを済ませたポスターの感想の補助や一時的な隔離処置に使います。
ちなみに、お手持ちのポスターや写真を額装(※額縁やフォトフレームの中に入れる事。)する時や専用ファイルへ入れる時に、ポスターや写真の裏面に中性紙を重ねるように入れておくと、気休め程度ですが、ポスターや写真を長持ちさせることが出来ます。数年おきに新しい紙と交換してください。 - マスク
出来れば使い捨てのもの。安い物でいいです。
気化した消毒用エタノールを吸い込んで酔っぱらったり、作業中に出たホコリやカビの吸入リスクを少しでも減らすことが出来ます。メガネもあると、なお良いです。 - 使い捨てのビニール手袋
スーパー・ホームセンター・100均ショップなどで売っている物で良いです。
ここでは、エタノールを触る時に使います。 - ペーパータオル
主に、エタノールのふき取りや、ポスターの印刷面のクリーニングで使います。スーパー・ホームセンター・100均ショップなどで売っている物を使いました。手や食卓を拭く用のと「リー〇クッキングペーパー」みたいな不織布のものという、2種類を用意します。安いものでいいです。ただし、欧米で販売されているような紙自体に印刷があるものはNGです。
- 水道水
1980年代以降のポスターの印刷面の簡易的なクリーニングに使います。
いわゆる除菌処理をした水です。ミネラルウォーターや井戸水は、紙に悪影響を与える菌などがいることがあるのでNGです。 - ホウキとチリ取り
消しゴムクリーニングのカスのお片付け目的の物。用意するかは自由です(^_^;
輪ゴムの成れの果てとの格闘
ドライクリーニングの前に輪ゴムの除去なのですが、年月が経ちすぎているせいか、ですり下ろしていない方のプラスチック消しゴムが効きませんでした・・・。
どうすればポスターから離れてくれるのか悩んだ末に、よく洗った手指の爪を使って剥ぎ取りました・・・。これによって、印刷面の輪ゴムは9割中7割は取り除くことが出来ました。
その後、ポスターの表と裏に付着していた元・輪ゴムをすべて取り除きましたが、裏面は輪ゴム色に染まっている箇所が複数ありました・・・。
これが終わったら、消毒用エタノールとペーパータオルを使って、ポスターの裏面のドライクリーニングです。
ポスターの方に消毒用エタノールを吹きかけず、ペーパータオルに適量吹きかけてから裏面を拭いてください。消毒用エタノールを吸っているポスターは一時的にポスター自体が削れやすい状態になっているので、拭く時は力を入れ過ぎないように気を付けてください。
この作業で、ポスターの紙の除菌と汚れとカビの除去をした結果、輪ゴムで染まっていた箇所は大分薄くなりました。
印刷面の汚れとホコリとカビとの格闘・その1
裏面の次は印刷面のドライクリーニング。
ここでは、*3「消しゴムの原理」を利用して、ポスターの印刷面と紙に積もっているホコリやカビの除去をします。
消しゴムクリーニングには、注意点がいろいろとあります。
消しゴムの性質上、クリーニングをしたものの色味が若干明るくなります。そのため、あまり長く消しゴムクリーニングをやらないでください。あまり長くやっていると、印刷面の色が全部消えます。軽めで十分です!
なお消しゴムクリーニングをするのは、出来れば1980年代からバブルの時代に作られた厚手の紙のポスターや、戦後以降のハードカバーの本・コミックスの中身・文庫本の中身の紙でやるのを推奨します。
1990年代以降のポスター・ソフトカバーの本の中身・コミックスのカラーページ・アメコミの中身・雑誌のグラビアは、薄めの紙を使ったものが多いので、消しゴムクリーニングをするのは大変危険です・・・(-_-;
www.p-press.jp
印刷面の汚れとホコリとカビとの格闘・その2
ここでは、水道水で濡らした不織布のペーパータオルと、乾いた不織布のペーパーを使います。水ぶきをしたらすぐ乾拭きしないと、ポスターが紙の材料に戻ってしまうので、スピード勝負です。
「ワックス塗る。ワックス取る。」とつぶやきながら、水拭きと乾拭きをした結果。
予想外の大量の汚れの除去に成功しました。時は恐ろしいものです・・・。
こうして、クリーニングを済ませたポスターは模造紙と一緒にゆるく巻いて、自然乾燥させて作業終了です。
残念ながら、現行の肖像権の法律の都合で、クリーニングを済ませたポスター自体をお見せ出来ません・・・。
もしポスターを少しでも長持ちさせたければ、巻いたまま置いたり、ハンガーと洗濯バサミで下げておかないで、早めに保湿剤や香りが付いていない、*4普通のティッシュペーパーで印刷面と裏面のホコリなどを軽く拭って、一部のレコードショップやオンラインショップなどで売っている*5ポスターファイルやポスター用の額(ポスターフレーム)に入れてしまったほうが、アフターケア(と気)が楽です・・・。
*1:現行の肖像権の法律の都合でポスターの写真を載せられないので、ポスターのイメージイラストです。こんな感じのポーズの写真を使ったポスターだったと思ってください・・・。
*2:このポスターには、開催場所付近で掲示する宣伝目的のものと、公式コンサートグッズとして開催場所で有料配布(※=販売。)されているものがあったという。
*3:消しゴムをこすると、ゴムが紙に付着した鉛筆に含まれる黒鉛を剥がし取りながら、消しゴム本体より消しくずとして削れ落ちる。さらにその消しくずが紙から黒鉛を剥がし取りつつ、包み込んで取り除く。紙からは完全に黒鉛が除去されて消しくずに移行し、消しゴムには新しい表面が露出する。以上のサイクルで消しゴムが減り、消しくずが出て字が消える。
*4:「ク〇ックルハ〇ディ」などのような市販のホコリ取りに塗ってある薬物は、ポスターを痛めることがあるので使わないでください。
*5:お値段はまあまあします。お持ちのポスターやお財布と相談して買ってください・・・(-_-;A