洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧・敏宮龍一)によるブログ。

『ある山下テツローの場合』→第6.5話

第6.5話:とある孤独死、10数年ぶりのデパート勤務・・・の補足

今回は、彼が書いていた2008年2月12日のテキストの中にあった「行政解剖」と、2008年2月13日のテキストの中にあった「葬祭ディレクター」に関する内容についての事を掻い摘んで書こうと思う。

 

現行の日本の死亡届のイメージ

日本では、病院などの医療機関以外で亡くなった遺体。または、自然死・孤独死・事故死という犯罪性がなさそうな遺体は、死因を特定するために「行政解剖」というものが行われる。
まず、警察の人たちが遺体を警察署(または関連施設か医大)に運ぶ。次に、警察医か監察医などの警察委託された専門家が行う。ここでは、遺体を切り開いて、目で観て調べたり、遺体から臓器などから組織を採取したりする。これらの作業が済んだ遺体は、一度取り出した臓器を身体に戻し、傷も閉じて、警察などを通して遺族へ返される。なお遺体の死因が分かるまでは、数日から2ヶ月以上かかるという。

ちなみに、ある葬儀社の人によると・・・
「2010年代後半からは、(日本の)警察のルールが厳格化されたために、独身であっても、既婚者であっても、家や福祉施設医療機関の中で亡くなっても、死因がよく分からない人はとりあえず“変死”扱いにして、警察が勝手に持ち出して、解剖しても良いことになっています。もしも、亡くなった人のご近所にいる*1「かかりつけ医」がその場で死亡確認をすれば、警察に持っていかれないと思われますが、近年は時代の流れなどで「かかりつけ医」を持たない人が多くなっています。それに、警察で行う解剖は「行政解剖」という死因を特定するための解剖なので、*2解剖代と*3死亡診断書に関する費用が、ご遺族へ請求されます。」とのことである。

もしかすると、私たちも(強制的に)警察のお世話になってしまう時が来てしまうのだろうか?


次は、第6話の挿絵の中の“彼”の(あなたから見て)右胸に描かれている“アレ”について。

葬祭ディレクターのイメージ

©2021 Ryoichi Satomiya

これは、「葬祭ディレクター」の証明証をイメージしたものである。カードの色から判断して、“彼”は「1級」を取得していたようだ。
近年の葬儀社の広告や日本のテレビドラマの葬式シーンでも、胸に「葬祭ディレクター」と書かれたカードを着けている葬儀社の人役の人が出てくることがあるので、観たことがある人もいるかもしれない・・・。

この「葬祭ディレクター」というのは、日本の葬祭業界を代表する2つの組織、「全日本葬祭業協同組合連合会」と「全日本冠婚葬祭互助協会」が、1996年に作った民間資格である。「葬祭業に従事する人々の知識・技能の向上を図り、併せて社会的地位向上を図ること」を目的の資格で、労働省(現・厚生労働省)からも技能審査として認定されている。ちなみに、英語では「フューネラルディレクター(Funeral director)」と言う。

葬祭ディレクターには、1級と2級というのがある。
1級は個人葬から社葬までとすべての葬儀を執り行える知識と技能があることを証明しているとされていて、2級は(家族葬を含む)個人葬を執り行える知識と技能があることを証明しているとされている。
葬祭ディレクターを取得するには、葬祭ディレクター技能審査協会という組織が毎年9月に実施している「葬祭ディレクター技能審査」という試験を受けて、合格する必要がある。ちなみに、1級・2級を合わせた葬祭ディレクターの合格者は、2021年4月の段階では約34,000人いるという。
ついでに葬祭ディレクターの合格率を調べてみたところ、2018年当時に公開されていた情報によれば、1級は65.2パーセント。2級は72.5パーセント(当時の受験者数/1級:1,264人、2級:1,051人。)だった。

葬祭ディレクターの主な仕事は、大切な家族や人を亡くしたばかりの遺族との対面から始まり、遺族の気持ちに寄り添いながら、短期間で葬儀のプランニングをし、運営・進行しないといけないことから、故人の人生における最後の儀式を執り行っていくという重大な責任のある仕事であり、葬儀に関する知識や技術だけでなく、遺族や参列者にもきめ細かく対応できる質の高いサービス力も求められるという。
なお、葬祭ディレクターは年齢・性別・学歴は不問なのだが、2級は2年以上のアルバイト以外の葬祭業界での葬祭実務経験。1級では5年以上のアルバイト以外の葬祭業界での葬祭実務経験。または2級を取得してから2年以上経過していないと受験することが出来ない。だが2級だけは、葬祭ディレクター技能審査協会が認定した葬祭教育機関(葬祭ディレクター科などがある専門学校)でのカリキュラムを修了(または見込み)したら、受験することが出来る。

しかし、日本の葬祭業界では「葬祭ディレクター」の資格の価値については、葬祭業界によって異なっているという。
葬儀社の中には、「お客様の信頼を与えることができるので、必ず資格を取ってもらいたい」というところもあれば、「2級(葬祭ディレクター資格)の人は、相手にしない」や「葬祭ディレクターの資格なんて、ちゃんと勉強すれば誰にだって取れるんだから、葬祭ディレクターを所有していることは大して評価しない」というところもあるらしい・・・。
ただし、欧米の一部の国では、葬儀業界へ就職するには「葬祭ディレクター」の資格を持っていないと相手にもされないらしい・・・。

2008年に“彼”へ行った取材の時にも、葬祭ディレクターの試験のことを語っていたのだが、“彼”の場合は何か大変そうだったので、もう少し経ってから公開しようと思う。


→今度こそ、第7話へつづく・・・。


参考資料
葬儀葬式ch有限会社佐藤葬祭
第191回「警察に遺体が持って行かれちゃったら」
https://youtu.be/S59hkc4bPGo
いい葬儀ドットコム「事故で亡くなった場合の葬儀について」
https://www.e-sogi.com/guide/15131/
安心葬儀「警察署でご遺体を引き取るまでの段取りとは?検視の流れや費用も紹介します」
https://ansinsougi.jp/p-131
ラストクリーニング株式会社「死亡診断書(死体検案書)の基本知識とその料金目安」
https://last-cleaning.com/death-certificate-1919
いい葬儀ドットコム「葬祭ディレクターとは」
https://www.e-sogi.com/guide/17956/
キャリアガーデン「葬儀屋の資格・葬祭ディレクター試験の難易度・合格率」
https://careergarden.jp/sougiya/qualification/

*1:日本だけにある呼び方であって、制度ではないという。体調の管理や病気の治療・予防、自分や家族の健康や日常的に相談できて、緊急の場合にも対処してくれる地元やご近所にいる(医師および歯科医師を含んだ)開業医のことを指す。

*2:「検案料」という、警察または警察に依頼された専門家が遺体を解剖した時に発生するお金のこと。発見された地域によって、金額が異なるという。

*3:「死体検案書発行料」という、死亡届の右側の部分にある「死体検案書(「死亡診断書」のこと。病院で亡くなったか、事件で亡くなったかで呼び方が変わる。)」を監察医か警察委託の医師に記入してもらうためのお金のこと。死亡が確認された地域や死体検案をした人によって異なる。