洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧・敏宮龍一)によるブログ。

『ある山下テツローの場合』→第26話

第26話:From SAT/彼からの依頼・その1

ブログ掲載の都合上、一部自主規制あり。

2008年8月21日の午後2時。
この日は、空が晴れている上に灼熱地獄だった・・・。
私は、彼とJR立川駅構内の「光と緑の祀(まつ)り」という壁画が設置されている場所で待ち合わせる。すると、彼と思われる人物が(立川駅)南口のほうから、こちらの方へ歩いてくるのが見えた。
彼は*1あの時と同じようなラフな髪形だったが、夏なのに濃いグレー色のスーツに、白色のシャツに螺鈿細工のような物がついたループタイという格好をしていた。

そして北口のほうへ行くと、彼に連れられて、*2駅近くのとある喫茶店に入る。
そこで、彼はクリームソーダ。私はアイスティーを頼んだ。
敏宮「立川にこんな喫茶店があるなんて、知らなかったです。」
彼「前から(喫茶店が)あることは知っていたけど、ここに来たのは、僕初めてなんです・・・。」

2008年8月21日・その1

©2020,2021 Ryoichi Satomiya

しばらくすると、頼んだアイスティーとクリームソーダが来た。ところが、この時に来たクリームソーダを見て、お互い何か裏切られた気分になる。
彼「・・・なんか、(店の入り口に飾ってあった)サンプルと違う。」
敏宮「(アイスの量が、)山盛り・・・。」
彼が注文したクリームソーダは、緑色と自称メロンの香りを付けた甘い炭酸水と適量の氷で満たされたやや大ぶりのグラスの上には、まるで雪山を思わせるかのように多めのアイスクリームが盛り付けられている物だった。しかも、ソーダの上の雪山は、室温のせいもあるのか、いつ雪崩が起きてもおかしくない状態になっている・・・。そして、そのそばには小さい深皿とアイスクリーム用のスプーンが1つ置いてある。
彼が深皿とアイスクリーム用のスプーンに気付くと・・・
彼「取り皿だよね、これ・・・。少し分けてあげるね。」
彼は“少し”と言っていたが、どうみても普通のアイスクリーム一人前にしか見えないし、私にアイスを分けてくれても、彼のクリームソーダのアイスは量が減ったようには見えない。
そして彼のクリームソーダのグラスの中では、アイスはただひたすらに溶け込み続けて、ソーダ自体の乳白色の割合が増している。

2008年8月21日・その2

©2020,2021 Ryoichi Satomiya

彼は私にアイスを分け与えると、口を開く。
彼「実は、前に言おうとしていた頼みごとのことなんですけどね・・・。」
敏宮「はい。」
彼「実はね、僕は来年で死ぬんですよ。」
私は、彼のこの発言に一瞬固まった。
彼は私のその反応を見て、困ったような笑顔を浮かべている。

すると彼は、乳白色の割合が増して淡い緑色に変わったクリームソーダを一口吸うと、私にこう語りだす。

→つづく・・・。

*1:第25話を参照。

*2:2021年現在、この喫茶店は営業していないようだ。現在もバリケードのような物で出入口が封じられている。