洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧・敏宮龍一)によるブログ。

『ある山下テツローの場合』→第13.5話

第13.5話:ある亡くなった人とその葬儀・・・の補足

1980年代の彼

©2021 Ryoichi Satomiya

ここまでの『ある山下テツローの場合』では、「直葬」や「家族葬」という単語がよく出てきたような気がする。
そこで、ここでは直葬家族葬について、ザックリとだが、調べてみることにした。

だが、直葬家族葬を調べる前に、日本の葬儀ではおなじみの火葬について書いてみようと思う。
日本の火葬の歴史は縄文時代からあったらしいが、詳しいことはよく分からない・・・。
文献上で残されている日本で最初の火葬は、西暦700年に書かれた『日本書紀』に、72歳で没した奈良県元興寺の開祖である僧侶が、自身の遺言によって火葬・散骨されたということが記述されているという。
平安時代以降、皇族・貴族・僧侶と浄土宗門徒などに火葬が広まってはいたが、人間の遺体という水分や分子構造が複雑なタンパク質を多量に含んだ物質を焼骨に変えるまで燃やすには、生活必需品としても貴重だった薪木を大量に用いる必要があるのと、また効率よく焼くための高度に専門的な技術が求められることや、お金がもの凄くかかっていたため、火葬は身分の高い人だけで、庶民は*1「棺桶」へ収めて土中に埋める(土葬)というのが主流だったらしい。この流れは江戸時代の中期まで続いていたが、江戸時代の末期になってからは、庶民の間にも火葬が広まりだした。
明治時代に入ると、東京都の市街地では近接する火葬場の火葬に出る臭気や煙が近隣住民の健康を害している事が問題になったことで、1873年7月18日に「火葬禁止令」という法律が作られた。
しかし、都市部では間もなく土葬用墓地が枯渇し始めて、埋葬料の高騰や埋葬受け入れが不可能となる墓地も出てきために、当時の仏教徒や大学者からは火葬再開を求める声が相次ぎ、1875年5月23日に廃止された。
その後、明治政府は火葬場問題から宗教的視点を排して、公衆衛生的観点から火葬をするようになった。伝染病死体の火葬義務化に加えて、土葬用墓地の新設や拡張に厳しい規制を掛け、人口密集度の高い地域には「土葬禁止区域」を設定するなどの政策を取られた。
大正時代からは、地方自治体が火葬場設営に積極的になり、土葬よりも火葬の方が費用や人手が少なくて済むようになったこともあり、日本の多くの地域に火葬は普及したという。
ちなみに、テレビアニメ『鬼滅の刃』の中で、ある地域の郊外で「鬼殺隊」の関係者たちが、鬼に殺された人々の亡骸を埋めて墓を建てるシーンがある。このアニメの舞台設定は“大正時代の日本”とのことなので、作品中に出てきた墓のイメージはさながら間違ってはいないのかもしれない・・・。
現代の日本では、土葬習慣が根強い一部地区の住民・火葬を禁忌する宗教宗派の人・大規模な災害で火葬場が使えない時を除いて、ほとんど全ての遺体は火葬されている。

話を直葬家族葬に戻そうと思う。
この直葬家族葬は、どちらも参列者を限定し、宗教儀式を行わない葬儀のことである。1990年代まで、日本で葬儀と言えば、*2仏式で通夜と告別式を行ってから、火葬(または土葬)するというのが多数派であった。
だが、亡くなった人と遺族の経済的な不都合や核家族化に伴う近所付き合いの減少、日本人の宗教観の変化によって、この数十年の間に「自身の死後は直葬家族葬」というのが定着してきているのだという。
ちなみに、この「直葬」と「家族葬」という言葉は、一説によれば、1990年代に日本のある葬儀社が「家族中心での小さな葬儀」というスタイルを売り込むための戦略として作った造語らしい・・・。

この「自身の死後は直葬家族葬」という考え方は、日本の芸能人や著名人の中でも浸透してきているらしい。例えば、2013年に他界した宇多田ヒカルの母で歌手の藤圭子は、本人の生前の希望で家族だけの直葬だったと言われている。2020年に急逝した俳優の竹内結子、2021年に他界した俳優の田中邦衛や作曲家で俳優の小林亜星も、葬儀は家族葬だけで済ませて、「お別れ会」は行わなかったという。
かつての芸能ワイドショーではおなじみだった、芸能人や著名人の葬儀やお別れ会の中継は、2010年以降、滅多にお目にかかれなくなってきている・・・。

→今度こそ、第14話へつづく・・・。

 
参考資料
日本文化ブログ「日本はなぜ火葬?いつから始まった。その起源と歴史とは?」
https://jpnculture.net/kasou/
テレビアニメ『鬼滅の刃』第十三話「命よりも大事な物」
考える葬儀屋さんのブログ「直葬を安く効果的に行う方法を葬儀屋さんが教えます」
https://kangaerusougiyasan.com/archives/411286.html
いい葬儀「有名人・著名人の死亡記事100年分を調べてわかったこと」
https://www.e-sogi.com/guide/2907/#100

*1:「かんおけ」と読む。本来は江戸時代まで使われていた、遺体を座った姿勢にして納める大型の桶のことを指す言葉だったが、現代では棺の別称の一種になっていて、木材などの燃えやすい素材で作られた棺を指すという。

*2:主に、1名以上のお坊さんが遺体か遺骨に向かって、お経をあげている葬式のこと。このスタイルの葬式をされると、自動的にお釈迦様(別称・ブッダ)の弟子の一人にされるらしい・・・。