洋梨とバックロールエントリー

敏宮凌一(旧・敏宮龍一)によるブログ。

『ある山下テツローの場合』→第5話

第5話:彼の身に起こった“あの会社”の影響と2月の大雪

 彼の遺品のUSBフラッシュメモリ内「2008」フォルダから「200801」より。ブログ掲載の都合上、一部自主規制あり。

01/28/08(2008年1月28日)

2008年1月28日の彼

©2021 Ryoichi Satomiya

パートナーと朝食を取る。今日から、応援のために八王子へ通う。
午前8時過ぎ。
八王子駅に到着。立川駅八王子駅も、駅周辺の人通りが多い。そういえば、どこかのバラエティ番組で「立川市民と八王子市民は敵対している」と言われているそうだが、*1からしたら、立川市も八王子市も、ドングリの背比べのような気がする・・・。
両者の駅の中にある簡単な地図を観た限りになるが、強いて違いを挙げるなら、立川駅周辺には小売店がたくさんあるが、八王子駅周辺は小売店より医療機関がたくさんあるという事くらいだろうか・・・。

僕のいる会社の系列仏具店が入っているビルに着くと、挨拶をし、仕事の説明を受けながら、開店準備を手伝う。僕の名札には「研修中」と書かれていた。
開店時間になると、店の側で並んで会釈を1分ほどすると、店のバックヤードへ移動。バックヤードでは事務作業などが待っていた。

開店時間の9時30分を過ぎている。
バックヤードから防犯カメラからの映像を覗くが、客の気配を感じない。午後に、僕より年下の女性社員と共に、店内にある仏壇のホコリ取りや売り場にある物の数の確認をして、閉店準備の手伝いと掃除を済ませて、19時過ぎに退社した。

01/29/08(2008年1月29日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。朝から小雨が降っていた。
開店準備を手伝い、開店時間になると、店の側で並んで会釈を1分ほどすると、店のバックヤードに行って、デスクワーク。バックヤードから防犯カメラからの映像を覗いてみるが、今日も客の気配を感じなかった・・・。
仏具店が忙しくなるのは地域にもよるが、確か「盆前」というお盆に突入する前の数日間だと、前に聴いたことがある。多くの日本人は、この盆前の時にお盆の儀式で使う物を仏具店に買いに来るらしい。だが、繁忙期以外の仏具店は・・・なんか暇だ。
18時過ぎに、閉店準備の手伝いと掃除を済ませて、19時過ぎに退社した。

01/30/08(2008年1月30日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
午前中はバックヤードで事務作業。バックヤードから防犯カメラからの映像を覗いてみるが、客の気配を感じなかった・・・。
午後。
店内のレジの側で、レジの操作マニュアルを見ていると、店内に中学生か高校生と思われる集団がいることに気付く。
念のため、店内にある仏壇のホコリ取りをするフリをしながら、数珠売り場に近寄って、彼らの話に聞き耳を立てていると、どうも彼らは葬儀などで使う目的ではなく、ファッションアイテムとして使うための数珠を探しているようだ。
そういえば一部の芸能人の影響なのかは分からないが、告別式や「お別れ会」の参列者にも、明らかに*2「念珠」ではなく、数珠風のブレスレットを手首から外して、仏さまに手を合わせている人を葬儀の会場で時々見かけることがある。その度に*3「それは、こういう時にはダメなヤツだって・・・」と心の中で思っている。

01/31/08(2008年1月31日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
女性社員たちが新しく仏壇を買いたい人の相談を聴きに店に出ているが、僕はバックヤードでの電話応対と商品の在庫確認で一日が終わった。
その日の夜。
テレビのニュースの中で、*4あの人材派遣会社が「職業安定法」違反の疑いで警視庁の家宅捜索を受けたというのが報じられていた。


彼の遺品のUSBフラッシュメモリ内「2008」フォルダから「200802」より。ブログ掲載の都合上、一部自主規制あり。

02/01/08(2008年2月1日)

2008年2月1日の彼

©2021 Ryoichi Satomiya

パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
午前はバックヤードでの事務作業をした。
午後。
トイレ休憩から戻る途中、一部のビルの利用客が通路で「雪が降ってる」と話しているのを聴いた僕は、足早にビルの窓の方へ向かって観ると、テレビの天気予報では言っていなかった牡丹雪が降っているのを肉眼で確認する。
急いで仏具店のバックヤードへ戻ると、店長が不在だった。仕方なく先輩の女性社員たちに報告する。すると、一人の先輩の女性社員が「“雪の中帰りたくないオーラ”を出しながら仕事しよう」という、聴いたことのない謎のワードを言われる。
これが功を奏したのか、雪はうっすらと積もっただけで終わり、19時過ぎには普通に歩いて帰れた。

02/02/08(2008年2月2日)
この日は休みだったパートナーと朝食を取る。
真夜中から雪が降っていて、家のテレビでは立川駅新宿駅南口の降雪中継が流れている。だが、中継を観ている限りでは、雪の量はたいしたことが無さそうに思えた。パートナーとは「このまま雨になればいいのに」と話す。
僕は、パートナーに送り出されて八王子へ向かう。
この日は、バックヤードで在庫確認の手伝いや店内にある仏壇のホコリ取りと、閉店準備の手伝いと掃除を済ませて、19時過ぎに退社した。

02/03/08(2008年2月3日)
この日は休みだったパートナーと朝食を取る。
昨日の夕方から雪が降っていて、いつの間にか大雪に変わっていた。家のテレビでは*5青梅マラソン」が大雪のせいで中止するというニュースや*6八王子駅の近くからの中継が流れていて、この日は休みのパートナーが発する自動小銃のようにけたたましい愚痴が近くで聞こえる(と言うか、君が出勤する頃には、雪は残っていないと思うが・・・。)。僕はパートナーに送り出されて八王子へ向かった。

午前中、仏具売り場の確認をする。ベーシックなタイプの仏壇用のロウソクや、徳用の線香が大分減っている。商品の発注をするべきかを先輩社員に相談する。勤務中、仏具店の店長に「今日は17時で上がって良い」と言われた。

帰り道。
八王子駅の改札では、人だかりが出来ている。

夜。
パートナーが立川の駅ビルで買ってきた弁当と、処分品の「鬼打ち豆」をパートナーと一緒に互いの年齢の数だけ食べた。なぜだろう。毎年食べる豆の数が増える度に悲しい気持ちになる・・・。

02/04/08(2008年2月4日)
パートナーと朝食を取っていると、突然立川の本社から電話が来る。午前中は若手の社員たちで、駐車場の雪かきと駐車場にある営業車両(霊柩車だけは屋根のある駐車スペースに停められている。)の除雪、職場と職場の中にある自社ホールの歩行者が歩く場所の雪かきと融雪剤撒きの手伝いに来るように言われる。
出勤していた社員の一人から「昨日のほうがもっと大変でしたよ。ドカ雪がエンドレスだったんで・・・。」と笑いながら話していたのを聞いた。八王子の方も雪がすごかったので、それはよく分かっているつもりだ。明日から明後日の間に、絶対筋肉痛になっているに違いない・・・。

立川での手伝いが終わるとそのまま八王子へ行って、午後は接客や商品の*7前出しなどをした。
東京都福生市から通勤している女性社員たちが17時に早引けさせているので、店長と僕で閉店準備や掃除を済ませて、19時過ぎに帰った。

02/05/08(2008年2月5日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
首から下が昨日の雪かきの影響に襲われていて、いつもよりも動きが悪いし、重い・・・。
この日は、仏具店の店長が僕の体調を気遣って、バックヤードでの事務作業だけにしてくれて、17時に上がって良いと言われた。
仏具店のあるビルを出ると、パートナーへのお土産に、足早に*8「都まんじゅう」の店へ行った。

02/06/08(2008年2月6日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
朝から雪が降っている。家のテレビでは立川駅新宿駅南口の降雪中継が流れていたが、中継を観ている限りでは、雪の量はたいしたことが無さそうに思えた。
仏壇のホコリ取り中、仏具店の店長から女性社員たちと共に「今日は17時で上がって良い」と言われる。
帰り道。
また八王子駅の改札に、人だかりが出来ている・・・。

02/07/08(2008年2月7日)
パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
午前はバックヤードで事務作業。
午後に線香売り場の確認をしていた。
その時、一人の若い女性のお客が、線香売り場の棚の一部を観ていることに気付く。なんでも、去年亡くなった婚約者の月命日に特別なお線香をあげたいと思って、線香を探しに来たのだという。色々と提案をした末、女性は煙と灰の少ないタイプのコーヒーの香りのお線香を1つ買って帰った。
18時過ぎに、店内にいる一人の客の様子を見ながら、閉店準備の手伝いと掃除をする。

02/08/08(2008年2月8日)

2008年2月8日の彼

©2021 Ryoichi Satomiya

パートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
朝食を済ませ、立川駅の改札を抜ける。僕は都内へと向かうパートナーを見送ると、八王子へ向かった。

午前中から昼過ぎ。
会計済みの複数の線香と線香立てを袋に詰めたり、ラッピングをしたりする手伝いをする。なんでもあるNPO法人からの注文で、経済的な都合で仏具を買えない家庭に線香と線香立てを贈るのだという。「こういう事はNPO法人じゃなくて、行政がやればいいのに」と心の中で思いながらも、黙々と手伝う。
午後。
レジの側で、レジ周りの整理をしている。途中、*9「お鈴」を新調するかで悩んでいる客と、それに答える店長の声が聴こえる。

02/09/08(2008年2月9日)
この日は休みだったパートナーと朝食を取り、八王子へ行く。

午前は仏具売り場の棚の確認、午後はバックヤードで事務作業をしていた。
閉店準備の手伝いと掃除を済ませて、19時に退社。
立川へ帰るために東京(駅)行きの電車に乗り込むと、なぜか車内でニャーニャーと聴こえる。人混みでよく分からなかったが、*10誰かが猫を連れて乗車しているようだ。

02/10/08(2008年2月10日)

2008年2月10日の彼

©2021 Ryoichi Satomiya

この日は休みだったパートナーと朝食を取り、八王子へ行く。

午前。
仏具売り場の棚の確認。ベーシックなタイプの仏壇用のロウソクや、徳用の線香が大分減っている。商品の発注をするべきかを、先輩社員に相談する。

午後。
バックヤードで事務作業中。防犯カメラからの映像を覗くと、また葬儀などで使う目的ではなく、ファッションアイテムとして使うための数珠を探している若者のグループの姿を観た。しかし、ふと何故か妙な感じがしたので、足早に数珠の売り場へ行ってみると、グループの姿は既に無かった。そして売り場を見ていると、3,800円の男性用の数珠が1つ無くなっていた・・・。
店長に報告する。無くなった物の値段も値段なので、雷の1つでも落ちるかと思っていた。だが、*11「この辺りは治安が悪いですから、店からケガ人が出るより良いですよ」と、店長に言われた。そして、デスクへ移動すると、上司に言われた書類を書く。そして、一人の先輩の女性社員と一緒に、近くにある交番へ行って、被害届を出した。

夜。
パートナーにこの事を話すと、「仕方ないよ。多くの若者は、自らの欲望を抑制し出来ない荒ぶるエゴイストなんだから。向こうさんも気づく時が来るよ」と慰められる・・・。

02/11/08(2008年2月11日)
この日は休みだったパートナーと朝食を取り、八王子へ行く。
今日は建国記念の日の祝日だが、いまの僕には関係の無い日だ・・・。
今日がラスト。しかし、心の中では昨日の万引きの事をまだ引きずっている。

着いて早々、店長から「今日で最終ですね。2週間お疲れ様でした。」と声を掛けられる。なんでも、今朝に立川の本社から通達があって、明日から、新しく契約した人材派遣会社から、事務職専門の人と接客専門の人が来ることになったという。

午前はバックヤードでの事務作業、午後に仏壇のホコリ取りやレジ打ちや袋詰めなどをした。

閉店準備の手伝いと掃除を済ませて、19時に店のシャッターを下ろすと、店長から今日付けで僕が立川へ戻ることをほかの社員たちに知らせる。僕も挨拶をした。挨拶を終えると、先輩社員たちから、小さい花束・5つと*12「松姫もなか」というお菓子をもらった。

こうして、僕の八王子への出向は終わった。明日から、立川市での地獄の日々か・・・。

→つづく・・・。


参考資料
まいじつ2016.12.03「都心で雪が降ると必ず「八王子駅前」から中継されるのはなぜ?」https://myjitsu.jp/archives/13147
JRおでかけネット「FAQ・ペットと一緒に列車に乗るには、どのようにすればよいですか。」
https://faq.jr-odekake.net/faq_detail.html?id=4718

*1:彼の個人的見解です。

*2:数珠の正式名称。なお本来、念珠とは、仏教徒が経を唱えた数を数えるためのアイテムであって、お守りやファッションアイテムではない。ちなみに数珠は、仏具屋・一部の通販・礼服を扱う紳士服屋・100均ショップでも購入可能である。

*3:日本の葬儀の場合。本来、仏式(※主に、僧侶がいる葬式のこと。)の葬儀会場では「供養の気持ちを表す」といった意味で、子供も大人も自分用の数珠を必ず持って参列するのが常識だとされている。なお、ファッションやお守り用の数珠風ブレスレットを腕から外して、数珠の代わりにして仏さまへ手を合わせるのはマナー違反だと言われている。なお、ある葬祭業者の人曰く「もしも数珠を持たずに葬儀へ行った場合。仏さまへ手を合わせる時には、無理に数珠風のブレスレットで代用せず、何も持たないで手を合わせても良い」という。

*4:第4話を参照。

*5:1967年から東京都青梅市で開催されている、日本の有名な市民マラソン大会の1つ。2008年2月3日に、第42回の大会が開催される予定だったのだが、当日の早朝から降り続いた大雪の影響で開催不可能になった。ちなみに「青梅マラソン」は、過去に大雪が原因で3回中止した事がある。

*6:2000年代から2010年代の東京都の一部テレビ局の積雪中継では、JR八王子駅北口のペデストリアンデッキとその周辺が、なぜか積雪中継の現場の1つとして出てくることがあった。

*7:本来は、スーパーやコンビニなどの小売業でよく使われる業界用語の1つで、商品棚の手前側の商品が売れた後に、奥にある商品を手前側に出す作業のこと。

*8:JR八王子駅北口の近くにある「つるや製菓」で、日中に製造・販売している焼き菓子。見た目は、秋田県の「金萬(きんまん)」というお菓子に似ている。

*9:「おりん」と読む。仏壇に置かれていて、専用の棒で叩くと甲高く澄んだ音が出るお椀のような形をした物。人々の邪念を払い、あの世にいる故人への純粋な祈りや供養の心を、澄んだ音にのせて伝える道具だという。仏教の宗派によって、呼び方が多少異なる。どうでもいいことになるが、2012年に東京都で開催されたカンニング竹山の単独ライブの中で披露された、2006年に白血病で早逝した相方についてのパフォーマンスの小道具として、お鈴がステージに登場したのだが、壊れるまで叩かれていた・・・。

*10:ペットと一緒に電車へ乗ることができるかどうかは鉄道会社によって異なる。これはJR東日本の場合。ペットの小柄な犬・猫・鳩だけは、長さ70cm以内、最小の立方形の長さと幅および高さの合計が90cm、動物を合わせた重さが10キロ以内になる容器に、ペットの全身を収納して、人がいる方の改札口で「手回り品きっぷ(※1頭につき、290円。)」を買えば、目的地までペットと一緒に電車へ乗ることが可能だという。ちなみに、盲導犬介助犬聴導犬だけは無料。

*11:2000年当時の話であって、現在はまあまあイイ感じらしい・・・。2000年代の東京都八王子市は、2010年代に入って、市内にある多くの短大・大学が東京都三鷹市や都市部へ移動するまでは、短大・大学とキャンパスが複数ある地域だった。その影響もあってか、JR八王子駅北口周辺は、古の時代からある多くの呉服店のほかに、数多くの小売店や飲食店やアミューズメントパークなどの娯楽施設も複数件あって、すごく賑やかで若者もたくさんいたが、少々ヤンチャな老若男女もいた・・・。

*12:東京都八王子市明神町で売っている、八王子にゆかりがあると言われている武田信玄の息女・松姫の姿をした和菓子。中の餡の味は、小倉・こしあん・柚子・しそ・栗の5種類。